study研究成果
オープンでスマートなキャンパス施設の実現に向けての提言
2020/01/07オープンでスマートなキャンパス施設の実現に向けての提言
東大グリーン ICT プロジェクト
2016 年 11 月 18 日(初版)
2016 年 12 月 27 日(追記)
2017 年 4 月 4 日(追記)
概要
キャンパス施設を構成するすべてのハードウェアとソフトウェアが、共通のオープンな技術仕様に基づいて相互接続し、相互にかつ自由・自律的に連携協調動作可能な環境を実現することで、(1) 持続的なイノベーションと、(2) 継続的・効率的・低コストの運用、(3)安全な継続的運用、さらに、(4) 地球環境対策に資する運用、を同時に一つの共通インフラで実現することを目指した、スマートなシステムの設計・構築と運営を実現しなければならない。 すなわち、これまでの、物理レイヤからアプリケーションレイヤまでの機能が独立した独自技術を用いた各サブシステムから構成される「垂直統合型のサイロ型システム(あるいは ストーブ&パイプ型システム)」を、すべてのサブシステムに共通するオープンな技術を用いて相互接続し連携動作することが可能な『相互接続性を最重要要求条件』とする「水平協調型のプラットフォーム型システム」へと、移行させることがキャンパス施設のスマート化であり、キャンパス施設の長期的観点からのライフタイムコスト注1 の削減と高機能化と運用の継続性の実現に寄与・貢献する。相互接続性を最重要条件とするキャンパ
ス施設においては、「外部システム・外部機器との接続」を前提にした、『セキュリティー・バイ・デザイン(Security-by-Design)』の考え方に従った、すべての ハードウェア・ソフトウェアに関するサイバーセキュリティー対策の実装が必須条件とされる方向を目指さなければならない注2。
オープン化とスマート化は、キャンパス施設を構成するすべてのハードウェアとソフトウェアに関して実現されるだけではなく、これらの調達手順と運用手順のオープン化とスマート化を実現するとともに、現在の「ベンダー主導」の設計・実装・運用・管理手順を、「オーナー主導・ユーザ主導」注3 あるいは ユーザとベンダーが密接にシステムの技術仕様を定義する Dev-Ops注4と呼ばれる状況へ変革することで、より小さなコストで迅速かつ容易に、キャンパス施設の高度化・効率化・安定化を実現することが可能となる 注5。 「ベンダー主導」の状況を、「オーナー主導・ユーザ主導」に変化させるためには、発注者(施主)組織の担当者の知見と経験値の向上が必要となり、この実現に資する「発注者側のスキル向上」が実現されなければならない。あるいは、発注者側の意思の具現化を支援することが可能な事業者あるいは組織を活用することも、有効な方法であろう注6。発注者側の知見の充実と向上によって、発注者側と受注者側の間での、適切な緊張感をもって、切磋琢磨と連携が実現される環境を確立しなければならないと考える。
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1 短期的利益を最大化することで、結果的には長期的利益を損なうような、長期的責任を放棄・無視したプロジェクト企画とコスト評価ならびに予算運用は、組織にとって不利益となる場合が多い。「振り逃げ禁止」の原則を適用すべきである。
2 このような考え方は、内閣府が提言している「科学技術イノベーション総合戦略 2016」、2016年 1 月に閣議決定された「第 5 期科学技術基本計画」においては、Society 5.0 と定義されており、すべてのシステムが IT/ICT 技術によってオンライン化・オープン化・スマート化され、
相互接続された自律的統合システムとして連携協調・協働動作を、十分なサイバーセキュリティー対策とともに実現し、創造的な新機能を実現することが、我が国の今後の戦略的施策・方向性と明言されている。
3 ベンダーへの「丸投げ禁止!」
4 開発(Development)と運用(Operating)を組み合わせた混成語で、開発担当者と運用担当者が連携・協力する開発手法をさす。
5 常に小さなコストで実現可能とは言えないが、特にライフタイムコストという観点からはより小さなコストとなることが少なくない。
6 成功事例としては、Plantec 社によるキューデンインフォコム社・QTnet 社の「データセンター福岡空港」が挙げられる。